幼馴染
幼稚園の頃の幼馴染家族が、なぜか家に来た。
僕はちっとも覚えていなかったけれど、それなりに仲は良かったらしい。
同じ二十二歳。そして今年大学の卒業も決まっていて、広島で介護職に内定。
なかなかの好青年で、自分とは違ってしっかりと成長したある種の自立雰囲気を醸し出していた。
高校と大学では自転車、なんだったかな、それ系のスポーツで国体にも出たそうだ。
いやあ、立派だね。見習いたいと思うけれど、僕にその気は全く無かったり。
奥様二人に、その青年一人、母親と僕の合計四人で話したわけだけど、僕はニートでヒッキーのくせに緊張を全くしない変な人間なので、上手く談笑できた。
適当に持ち上げ、適当に話をあわせ、適当に質問をし、適当に答える。
常に何を喋るか頭の中で考えるのは、普通ではないだろうけど。
青年や奥様達は僕の辿ってきた道筋を知っているので、結構気を使ってくれていたのかもしれない。
みんな良い人だった。
それと大学や専門学校は諸事情で諦めました。いや、辞めました。
よくネットでニートって親が死んだらどうするの? なんて言われていますが、そんなの誰だってわかっているだろうに。
答えは、どうにもならない。
僕はちっとも覚えていなかったけれど、それなりに仲は良かったらしい。
同じ二十二歳。そして今年大学の卒業も決まっていて、広島で介護職に内定。
なかなかの好青年で、自分とは違ってしっかりと成長したある種の自立雰囲気を醸し出していた。
高校と大学では自転車、なんだったかな、それ系のスポーツで国体にも出たそうだ。
いやあ、立派だね。見習いたいと思うけれど、僕にその気は全く無かったり。
奥様二人に、その青年一人、母親と僕の合計四人で話したわけだけど、僕はニートでヒッキーのくせに緊張を全くしない変な人間なので、上手く談笑できた。
適当に持ち上げ、適当に話をあわせ、適当に質問をし、適当に答える。
常に何を喋るか頭の中で考えるのは、普通ではないだろうけど。
青年や奥様達は僕の辿ってきた道筋を知っているので、結構気を使ってくれていたのかもしれない。
みんな良い人だった。
それと大学や専門学校は諸事情で諦めました。いや、辞めました。
よくネットでニートって親が死んだらどうするの? なんて言われていますが、そんなの誰だってわかっているだろうに。
答えは、どうにもならない。
結婚
前の記事で僕は結婚なんて幸せとは限らない――なんてことを書きましたが、
実は唯一、憧れた結婚があります。
それは遡ること数年前、僕が中学二年生の頃にあった結婚のことだ。
僕の家族はキリスト教で、幼い頃は毎週日曜に母と父に連れられて教会に行ってました。
その教会はとある夫婦の夫が牧師をしているアットホームな教会で、教会自身も色が白く統一されて大きいながらも、清潔感があって暖かみのある教会だった。
まるで結婚式場のような教会と言ったほうが分かり易いかもしれない。
そこに僕は日曜朝に毎週行っていたのだけれど、幼い僕にとって牧師の説教は算数の授業並みに眠たい時間で、いつも僕は積み木や絵本のある部屋で暇を潰していた。
と、いっても一人で遊んでいたわけじゃない。妹もいたし、なにより高校生のお姉さんと同じく高校生のお兄さんが遊んでくれていた。
高校生のお姉さんは、とても綺麗だった。所謂黒髪ロングで、容姿端麗。芸能人なんかより、よっぽど可憐だったことを覚えている。物腰が穏やかな、古風な美少女。漫画みたいな人だった。絵本をよく読んでもらった記憶がある。
高校生のお兄さんも爽やかな格好良さのある男性で、毎週一緒にウォーリーを探せをやって遊んでくれたほど、子煩悩な人。そしてバスケ部で、教会の外にバスケットゴールを設置したくらいのバスケ好きだった。
お兄さんのほうが教会の息子で、お姉さんの方は隣のマンションに住んでいた。
この二人はつまり幼馴染で、そして恋人でもあった。しかも小学生の頃から。
そんな二人と僕はよく遊んでいたのだけれど(遊んでもらっていた)、僕が教会に行かなくなってから同然の如く会わなくなった。
そして僕が中学二年生になって久しい日、この二人の結婚式の招待状が届いたのだ。
お世話になったし、何よりも家族が行くので、僕も結婚式に行くことに。
結婚式場はもちろんあの教会。
しかし、僕はびっくりした。なにせ式場には百人以上の若い大学生風の人たちが大勢いたからだ。
その人たちは全員あの二人の知り合いで、小学生の頃の友達。中学生の頃の友達。高校生の頃の友達。大学生の頃の友達。そして先輩やお世話になった人たちだった。
式が始まると、プロジェクターで写真や映像を写しながら、みんな笑顔で、二人に関する思い出を語っていた。
二人の馴れ初め。初めてキスをしたときのこと。二人が中学生の頃敢行したプチ家出。高校生の頃、イギリスに行った旅行こと。キャンプや海水浴。夏祭り。部活にサークル。
写真や映像の中の二人やその友人達は、本当にキラキラと、輝いていた。
俗物的じゃなく、宝石のように純粋に輝いていた。
時折、ドっと笑い声が湧く。
僕は呆然と見入る。
二人は、とても幸せそうな笑顔で、高校生の頃と全く変わらず美しく、格好良かった。
初めて目撃する二人のキス。
教会の外の広い庭に場所を移す。
目が痛いほど青い空。
きっと僕は、あのときの結婚式を『幸せ』だと定義してしまっている。
だから生半可なことでは、幸せを感じられないのかもしれない。
あの二人は、今や二人の子供がいる。
今でも教会に通っているらしい。
時折母親から、あの二人が僕を心配しているよ、と伝えられる。
伝えられれば伝えられるほど、僕は惨めに思えてくる。
でもあの二人だけは、そのままずっと幸せでいて欲しいと、僕は願っている。
実は唯一、憧れた結婚があります。
それは遡ること数年前、僕が中学二年生の頃にあった結婚のことだ。
僕の家族はキリスト教で、幼い頃は毎週日曜に母と父に連れられて教会に行ってました。
その教会はとある夫婦の夫が牧師をしているアットホームな教会で、教会自身も色が白く統一されて大きいながらも、清潔感があって暖かみのある教会だった。
まるで結婚式場のような教会と言ったほうが分かり易いかもしれない。
そこに僕は日曜朝に毎週行っていたのだけれど、幼い僕にとって牧師の説教は算数の授業並みに眠たい時間で、いつも僕は積み木や絵本のある部屋で暇を潰していた。
と、いっても一人で遊んでいたわけじゃない。妹もいたし、なにより高校生のお姉さんと同じく高校生のお兄さんが遊んでくれていた。
高校生のお姉さんは、とても綺麗だった。所謂黒髪ロングで、容姿端麗。芸能人なんかより、よっぽど可憐だったことを覚えている。物腰が穏やかな、古風な美少女。漫画みたいな人だった。絵本をよく読んでもらった記憶がある。
高校生のお兄さんも爽やかな格好良さのある男性で、毎週一緒にウォーリーを探せをやって遊んでくれたほど、子煩悩な人。そしてバスケ部で、教会の外にバスケットゴールを設置したくらいのバスケ好きだった。
お兄さんのほうが教会の息子で、お姉さんの方は隣のマンションに住んでいた。
この二人はつまり幼馴染で、そして恋人でもあった。しかも小学生の頃から。
そんな二人と僕はよく遊んでいたのだけれど(遊んでもらっていた)、僕が教会に行かなくなってから同然の如く会わなくなった。
そして僕が中学二年生になって久しい日、この二人の結婚式の招待状が届いたのだ。
お世話になったし、何よりも家族が行くので、僕も結婚式に行くことに。
結婚式場はもちろんあの教会。
しかし、僕はびっくりした。なにせ式場には百人以上の若い大学生風の人たちが大勢いたからだ。
その人たちは全員あの二人の知り合いで、小学生の頃の友達。中学生の頃の友達。高校生の頃の友達。大学生の頃の友達。そして先輩やお世話になった人たちだった。
式が始まると、プロジェクターで写真や映像を写しながら、みんな笑顔で、二人に関する思い出を語っていた。
二人の馴れ初め。初めてキスをしたときのこと。二人が中学生の頃敢行したプチ家出。高校生の頃、イギリスに行った旅行こと。キャンプや海水浴。夏祭り。部活にサークル。
写真や映像の中の二人やその友人達は、本当にキラキラと、輝いていた。
俗物的じゃなく、宝石のように純粋に輝いていた。
時折、ドっと笑い声が湧く。
僕は呆然と見入る。
二人は、とても幸せそうな笑顔で、高校生の頃と全く変わらず美しく、格好良かった。
初めて目撃する二人のキス。
教会の外の広い庭に場所を移す。
目が痛いほど青い空。
きっと僕は、あのときの結婚式を『幸せ』だと定義してしまっている。
だから生半可なことでは、幸せを感じられないのかもしれない。
あの二人は、今や二人の子供がいる。
今でも教会に通っているらしい。
時折母親から、あの二人が僕を心配しているよ、と伝えられる。
伝えられれば伝えられるほど、僕は惨めに思えてくる。
でもあの二人だけは、そのままずっと幸せでいて欲しいと、僕は願っている。
やれやれ
うちの父親はかなりプライドが高い。
なので自分の失敗談を全く話さない。話すことといったら自慢話だけである。
それで、そんな父は僕の知らない間に借金をしていたらしい。
その額はどうも1000万ほど。
とある会社の社長をやっていたので、おそらく不況で潰れたのだろう。
悲惨である。
一時期は安部元首相と会食をしたくらいなのに、まさに盛者必衰。諸行無常だ。
で。
なぜ僕が自慢話しか話さない父親の失敗を知っているかと言うと、父親がそのことを話したからだ。
要約すると、「一年で1000万を返したぜ!」である。
え!? そんな借金してたのかよ……。
と、僕は若干引いた。
しかも、この一軒家(今僕が居るところだ)を抵当に入れてたらしい。秘密で。
どんだけ。
まあ、この一年(今もだけれど)一日二十時間も働いていたからなあ。
ヴィクトリア朝もびっくりだ。
労働基準法を完全無視だった。
古代エジプトの奴隷より酷いかもしれない。
ちなみにそんな父に対しての印象は、
母「結婚したの失敗した。え? 嫌いなのかって? もちろん大嫌い。あんな奴」
祖母「あの詐欺師め」
叔母「株の金返ってこねえええ。ワロタ」
です。
本当、結婚=幸せではないね。ハハハ。全国の婦女子のみなさん、結婚はハイリスクハイリターンですよ。がんばって良い男を見つけてください。そして子供を作るのは計画的に。
ああ、最後に。
僕は父親のことを嫌いではありません。むしろそのバイタリティに憧れてもいます。
というか、僕には嫌いな人間はいないのかもしれません。
DQNだって、僕よりマシな人間だしね。
しかし、人生を幸せに全うするのって難しいですね。ポアンカレ予想並に難しい。
例え素敵な人と結婚しても、子供がニートになることもある。事故で死ぬこともある。病気で死ぬこともある。リストラされることもある。歳を取って相方がボケることもある。
ペシミストの戯言でした。
なので自分の失敗談を全く話さない。話すことといったら自慢話だけである。
それで、そんな父は僕の知らない間に借金をしていたらしい。
その額はどうも1000万ほど。
とある会社の社長をやっていたので、おそらく不況で潰れたのだろう。
悲惨である。
一時期は安部元首相と会食をしたくらいなのに、まさに盛者必衰。諸行無常だ。
で。
なぜ僕が自慢話しか話さない父親の失敗を知っているかと言うと、父親がそのことを話したからだ。
要約すると、「一年で1000万を返したぜ!」である。
え!? そんな借金してたのかよ……。
と、僕は若干引いた。
しかも、この一軒家(今僕が居るところだ)を抵当に入れてたらしい。秘密で。
どんだけ。
まあ、この一年(今もだけれど)一日二十時間も働いていたからなあ。
ヴィクトリア朝もびっくりだ。
労働基準法を完全無視だった。
古代エジプトの奴隷より酷いかもしれない。
ちなみにそんな父に対しての印象は、
母「結婚したの失敗した。え? 嫌いなのかって? もちろん大嫌い。あんな奴」
祖母「あの詐欺師め」
叔母「株の金返ってこねえええ。ワロタ」
です。
本当、結婚=幸せではないね。ハハハ。全国の婦女子のみなさん、結婚はハイリスクハイリターンですよ。がんばって良い男を見つけてください。そして子供を作るのは計画的に。
ああ、最後に。
僕は父親のことを嫌いではありません。むしろそのバイタリティに憧れてもいます。
というか、僕には嫌いな人間はいないのかもしれません。
DQNだって、僕よりマシな人間だしね。
しかし、人生を幸せに全うするのって難しいですね。ポアンカレ予想並に難しい。
例え素敵な人と結婚しても、子供がニートになることもある。事故で死ぬこともある。病気で死ぬこともある。リストラされることもある。歳を取って相方がボケることもある。
ペシミストの戯言でした。
ダメ人間
ダメ人間ってフレーズが、僕には当てはまらないような気がしてきた。
どちらかというと、僕は恥ずかしい人間だと思う。
大人子供で、自立できなくて、やる気が無くて、それでも格好をつけたがる。
そんな何処へ出しても恥ずかしい人間だ。
今日妹が帰って、家は静かになった。
そうして僕は思ったのだけれど、僕は変化を嫌う人間なんだなと気づく。
それが良い変化であれ、悪い変化であれ、変化そのものに拒否反応がある。
確か精神病でそんな症例のある病気があった気がしたが、忘れた。
まあいいや。
僕は努力ができない、もう駄目な人間だけれど、
それでも世界が平和であるよう祈りながら、明日もだらだら生きようと思う。
いつか終わりが来て、惨めに死ぬまで。
どちらかというと、僕は恥ずかしい人間だと思う。
大人子供で、自立できなくて、やる気が無くて、それでも格好をつけたがる。
そんな何処へ出しても恥ずかしい人間だ。
今日妹が帰って、家は静かになった。
そうして僕は思ったのだけれど、僕は変化を嫌う人間なんだなと気づく。
それが良い変化であれ、悪い変化であれ、変化そのものに拒否反応がある。
確か精神病でそんな症例のある病気があった気がしたが、忘れた。
まあいいや。
僕は努力ができない、もう駄目な人間だけれど、
それでも世界が平和であるよう祈りながら、明日もだらだら生きようと思う。
いつか終わりが来て、惨めに死ぬまで。
何もやってないよ
「何もやっていないから、ダメなんだよお兄ちゃんは」
そんなことを、先ほど大型店舗で買ったばかりの化粧品をイジリながら、妹は同時に僕もイジっていた。
いや、詰っていた。
「うちは今、お金が無いんだから。お兄ちゃんもバイトくらいできるでしょ」
「いや……だってさ、男と話すだけで、まるで好きな人と話すように緊張するんだよ」
「お腹も痛いし?」
「うん。お腹も痛いし」
そこで妹は、僕を見据えながら、
「誰だってそうだよ。私だって初めてのことを経験する時はお腹が痛くなったよ? 要するに甘えているんだよ、お兄ちゃんは」
正論だった。
「なんでそこまで責めるんだよ。もういいだろ、僕のことは」
「だ、か、ら、何もやってないから責めてるんだって!」
これも正論だった。
「ごめん」
「謝られても」
それもそうだった。
「みんな同じなんだよ? みんな苦しいけどがんばっているんだよ? お兄ちゃんが特別なわけじゃないんだよ?」
「そのくらい中学時代に理解してる」
「じゃあバイトくらいできるよ。私と話せるくらいだもん」
「いや、家族だからだろ」
「そんなことないって」
そして無言。
ふて腐れるとかじゃなくて――うな垂れる。
まるで死人みたいに。
妹は諦めたように話題を変えて、僕も和気藹々とその話に乗っかる。
僕は二階に上がり、一息を付く。
『みんな苦しいのにがんばっている』って、つまりそれは、この世は地獄みたいなものってことなのだろうか。
人間関係を忌避するようになってしまったこの僕は、きっと妹よりも苦しい世の中だと、なんとなくそう思う。
憤りとかじゃなくて、妹の言うことは正論だけれど、よくわからない、そんな最悪の気分だった。
そんなことを、先ほど大型店舗で買ったばかりの化粧品をイジリながら、妹は同時に僕もイジっていた。
いや、詰っていた。
「うちは今、お金が無いんだから。お兄ちゃんもバイトくらいできるでしょ」
「いや……だってさ、男と話すだけで、まるで好きな人と話すように緊張するんだよ」
「お腹も痛いし?」
「うん。お腹も痛いし」
そこで妹は、僕を見据えながら、
「誰だってそうだよ。私だって初めてのことを経験する時はお腹が痛くなったよ? 要するに甘えているんだよ、お兄ちゃんは」
正論だった。
「なんでそこまで責めるんだよ。もういいだろ、僕のことは」
「だ、か、ら、何もやってないから責めてるんだって!」
これも正論だった。
「ごめん」
「謝られても」
それもそうだった。
「みんな同じなんだよ? みんな苦しいけどがんばっているんだよ? お兄ちゃんが特別なわけじゃないんだよ?」
「そのくらい中学時代に理解してる」
「じゃあバイトくらいできるよ。私と話せるくらいだもん」
「いや、家族だからだろ」
「そんなことないって」
そして無言。
ふて腐れるとかじゃなくて――うな垂れる。
まるで死人みたいに。
妹は諦めたように話題を変えて、僕も和気藹々とその話に乗っかる。
僕は二階に上がり、一息を付く。
『みんな苦しいのにがんばっている』って、つまりそれは、この世は地獄みたいなものってことなのだろうか。
人間関係を忌避するようになってしまったこの僕は、きっと妹よりも苦しい世の中だと、なんとなくそう思う。
憤りとかじゃなくて、妹の言うことは正論だけれど、よくわからない、そんな最悪の気分だった。




